Neverending Nightmares ファースト・インプレッション

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 精神疾患によって体験した悪夢は極めてパーソナルな側面を持っていると思っている。これをどこまで共通言語化できるかが、ユーザーからの共感を得るためのカギであろう。が、共通言語化してしまえば最大公約数的なフィルターがかかり、パーソナルな成分はそれだけ薄れる。

 このゲームが精神疾患者の見る夢か、とイージーに考えてしまう事は危険である。繰り返すが、悪夢なんてものは個人の体験と密接に関係している。デバガメ根性でプレイしたところで何が何だかさっぱり分からないであろう。私は開発者ではないので、一体何が悪夢なのかよく分からない。私にとっては、このゲームのシチュエーションはさして悪夢とは思えない。一方、私以外の誰かにとっては、私が悪夢と主張するビジョンは「どこが悪夢?」と言われるかも知れない。

 

 ホラーゲームのカテゴリーの中にもいくつかバリエーションが存在することも留意していおきたい。

 パターン1は、ホラーゲーム風のアクションゲームである。バイオハザードクロックタワー2に代表される。ホラーゲームのリソースを実装しているものの、その根幹はアクションゲームである。敵を撃退する何らかの要素が仕込まれていることがポイントとなる。挫折を想定した場合、それはプレイヤーの操作ミスであり、リソース管理能力の欠如により、必要な時に必要な物資を消費し尽くしてしまって詰むケースがある。

 パターン2は、お邪魔キャラをひたすらやり過ごすタイプのアクションゲームである。ステルス側面が強調されていると言ってもいい。また、主人公には敵を撃退する手法がない、または極めて限定した場面に限られている。したがって、逃げる、隠れる、といった動作が重要となる。挫折する場合、このお邪魔キャラを突破する方法を発見できずに詰む。今のところ、Neverending Nightmares はこのパターンである。

 パターン3は、敵の存在をあくまでアクセントに止め、恐怖の力点を環境そのもので演出してくる場合である。敵が登場することが問題なのではない。敵が登場してきそうな環境が問題なのである。このパターンを極めて高いレベルでまとめたのが Amnesia であるが、この Amnesia のどこが怖いのかは色々と考えてみたので別の機会で書ければいいと思っている。結論から言って、敵に殺される事で挫折するのではなく、環境の前に心が折れるのである。

 

 Neverending Nightmares は今のところ、死にポイントの直前にリスボーンを用意しているので、死ぬ度に長い道を歩いていく面倒さは無い。また、操作系統についてはよく作られていると思う。例えば部屋に入った直後の主人公の動作と方向キーまわりの処理などは、できるだけプレイヤーの意にそぐわない行動をしない為の配慮が見て取れる。衣装タンスに隠れる場合、隠れるボタンを押した瞬間から回避フラグがONになり、どう考えても敵の攻撃範囲内で間に合わないだろこれ、という局面でも逃げきれる。

 逆にマイナスと思えるポイントはBGMである。ぶっちゃけ要らねぇ。開発者は無音によってもたらされる恐怖をもう少し研究するべきであった。常時音楽が流れているので、ここイッパツの効果音が薄れてしまうのである。窓の外に何かが通った時に「どどーん!」とこれ見よがしに効果音を挿入するのも良くない。恣意的すぎる。

 

 今のところ、このゲーム、物凄くリミックスしたい。細かい部分を調整して「ぼくのかんがえた、よりこわい Neverending Nightmares!」作ってみたい。どなたか制作者にワタリをつけてくないものだろうか。