The Graveyard & Tale of Tales

Rating:10 / 10

 

いやこんなノイズ、真っ正面から既存のゲームと同じように評価したところで何の意味もないだろ。これを正面から評価してるゲーム脳野郎の文章のクソつまんねぇ事と言ったら!

 

‥‥というノリで書こうと思ったが、The Path 繋がりで調べていくと日本語で書かれたインタビューがネット上にあるらしい。提示されているリンク先は消滅しているが、そこは Archive.org の出番である。ほらあった。

http://web.archive.org/web/20100110055223/http://www.zillionmonkey.com/?page_id=228

どうやら真面目に作ったらしい。私の予想は、資金回収を兼ねた The Path までの繋ぎで、騙されて金を払った連中を嘲笑しているとばかり思ったのだが。もっともこのインタビュー自体がブラフという可能性も残っている。そこは彼らのみが知る事である。

 

上記インタビューからも分かる通り、Tale of Tales はゲーム畑出身ではない。よってゲーマーの常識も通用しない。AAAタイトルと同じ視点から Tale of Tales のソフトウェアを評価しようとすると、手痛いしっぺ返しを喰らう。「ゲームだからゲームの視点て見ればいい」という視野狭窄に陥っていると一発で分かるからである。

 

特に The Graveyard については言葉でどうこう言うものではあるまい。ノイズに限らず、アート指向のロックの何がいいかを言葉で説明しろと言われてもちょっと困る。そういう意味では http://lalamayer.blog59.fc2.com/blog-entry-32.html はよく言葉で説明できたと思う。私個人としては「やっとこういうデベロッパーが出てきたか」と思う。ゲームは全く面白くない。が、確信犯的に面白くない。確信犯的に面白くないゲームは過去にもあったが、ネタや嫌味の文脈で存在したいた。しかし本作は真面目に面白くないゲームを作っている。この意味は非常に大きい。

 

ところで、Tale of Tales 周りの人脈について知っていると、このデベロッパーの立ち位置が見えてくる。私が知っているのは以下の2名である。

 

・Jarboe

The Path、Fatale にてサウンド周りを担当。元 Swans。Swans は80年代米オルタナティブの代表的存在である。初期はプレスから最も雑音に近いなどと酷評されているが、今最も再評価されているのはそのプレスから酷評されていた時期の音源なのだからたまらない。A Screw (Holy Money) (live) が最も初期 Swans の特徴を出していると思う。アルバム音源では Half Life、ピアノマジやめての Fool あたりが参考になる。中期から後期はインダストリアル~アンビエント風に作風をシフトさせ、Jarboe はその時期の中核的メンバーの一人である。Swans 解散後はソロ活動を行う他、近年では Neurosis とのコラボレート・アルバムもリリースしている。Neurosis もアートスタイルのヘヴィロックとして、この筋では「知らない奴はモグリ」な程度に有名なバンドである。

 

・Kris Force

The Graveyard、The Path、Fatale にてサウンド周りを担当。Amber Asylum のメンバー。やはり Neurosis と繋がりがあり、一部アルバムで共演している。Amber Asylum 自体はヘヴィロック・スタイルとかけ離れた事をやっているが、それでも Neurosis と絡むあたりがポイント。

 

キーポイントとなるのは上記2名と繋がりがある Neurosis である。Radiohead や Tool などではない。Neurosis は常にアンダーグラウンドのポジションをキープし続けているバンドだ。この辺りから Tale of Tales の目指す方向が見えてくる。彼らが作るのは人当たりの良い美術作品ではなく、曖昧で人によって解釈が全く異なる、よりアンダーグラウンドな作品である。

 

私はゲームをアートの表現手段として模索し、意図的につまらないゲームを作る彼らの姿勢を全面肯定する。仮にそれがブラフで、あのインタビューは大ウソ、実はあれを読んで感心している連中を指さして爆笑しているとしたら何点になるかと言うと、10点満点中100点を差し上げる。

 

さて、次は日本の出番である。古式に倣い、彼らは自らの表現 ( Output ) に意味性を込めている。そこから意味性を排除して、より先鋭的なものを作る事は日本のお家芸だ。パンクから派生したノイズは当初、アンチ・ミュージックとしてガチガチの意味性を持っていた。MerzbowIncapacitants、Painjerk ら日本のミュージシャンがそこから意味性を排除して純粋に音の強度のみで勝負し、今では世界的ミュージシャンとなっている。ゴスから派生したポジティブ・パンクが日本に輸入され、それを真似た世代が Auto Mod を筆頭とした第一世代のヴィジュアル系である。Dir en Grey はその延長線上に属する。

 

日本のゲームシーンが駄目になったかは、彼らに続くデベロッパーが日本に出現するかで判断できる。最も近い立ち位置にいるのがグラスホッパーあたりだろうが、あそこもゲームで商売しているので、まだ足りない。ましてや大手の動向など、以後の日本のゲームシーンの衰退にはあまり関係がなくなる時期に来ている。