Dear Esther ( PC )

※この文章はもともと泥酔して書かれたものである。だから無責任に全て許せと言うつもりは全くない。酔っ払った男がどういうレビューを書き殴れるものかのサンプルとして参考にしていただければ幸いである。

 

「おーい、以上の文章を書くだけで目の焦点の合わなさが原因となって(ここまでの)この文章、3回くらいクロス的に配置されてんだけど、いいのー?

 

「やっておしまい!!」

 

 

 

 もともとは Half Life 2 の MOD として出発したものを、今回グラフィックなどを強化して単独製品版化したのが本作である。日本語環境を求めるならば Playizm より日本語字幕版を入手できる。途中で流れる、何を言っているのか要領を得ないモノローグも考察の重要な要素となってくるので、観光目的で本作を手に取る向き以外はひとまずこの日本語字幕版を手に取るのが宜しいかと。観光は2時間ほどで終了である。

 もちろん英語が理解できるというなら話は別だが。

 

 本作は、ある程度指向性されたリニアな舞台の上を歩いてモノローグを聞き、また歩いてモノローグを聞き‥‥という案配で展開される。走るという動作がなく、ジャンプという概念もない。ましてやアイテムを拾う動作などもない。USE ボタンは概念からして存在しない。高所から落ちても死なないようだが、「野良水中」へ落ちると直ちに死ぬ(一度溺れてみることをお勧めする)。これが本作のゲームらしい部分ではある。しかしこの「落下→水中死」のトリックがある為に、例えば洞窟内にある足場の悪い(とグラフィックが主張している)岸壁などを進む時に「落ちないように移動する」ことが求められているような気にさせてくれるため、単調になりがちな移動へのスパイスとして十分に実効のある展開を味わうことができる。ちなみに死亡のペナルティは全くないと思われる。

 

 本作の特色はまずグラフィックにある。「息を飲むような」とはゲームの画像に対して散々使われてきた文句であるが、私は今までプレイしてきた 3D 描画のゲームソフト――上記の賛辞はさんざん使われてきた!――の中でほとんど唯一、ゲーム内での描写、特に洞窟シーンに、言葉そのままの意味で息を飲んだ。もはやテクスチャーの解像度がどうこうの言う問題ではないのである。その洞窟が学術的に正しく構築されているかなどは全くどうでもよろしい。目の前に連なっている鍾乳石と、したたる水と、地下水脈が全てなのである。現実法則に則っているかすら問題ではない。その場にそういう洞窟をイメージした空間があり、そこをある程度自由に動き回れることが重要なのである。そしてこの空間は、確実に美しい。

 

 このくだりは多分に個人補正がかかっていることは当然であり、人によってはゲームスタート直後の、風でうねり光を反射する草にそれを見いだすかも知れない。いずれにせよ本来は単なる背景に過ぎない部分を前面に押し出し、そこから強烈な存在感を引き出す手法は見事と言うしかない。

 

 ゲームそのものはさっさと終わってしまう。結末は曖昧なままである。4Gamer の指摘によると、どのモノローグが流れるかはランダムで決定されるそうだ。つまりゲーム毎にモノローグに差異が発生することになる。何周かする間に全体像が見えてくる可能性もある。私はこのモノローグに二通りの口調が存在するのではないか、と思ったところで考察を止めた。考察も重要だが、何より開発者が作り上げた一個の強力な空間を楽しんだ方がいいと判断したことによる。

 

お代1000円は得か? と言われれば困る。グラフィックのツボを刺激してもらえるなら(私のように)1000円の価値はあるだろう。特にピンと来ないのであれば、退屈な散歩と意味不明なセリフを聞かされるだけの何ともかったるいゲームと化す。

 

Rating:8 / 10